邪魔

邪魔_e0001663_207285.jpg奥田英朗の「面白すぎて眠れない・レールのないジェットコースターのような・宙吊りの疾走感・クライムノベル」。帯は公共広告機構管轄外?飛ばし過ぎ、と思う。古本屋で買っておいて言うのもなんだが。

あとがき読むと、レールのないジェットコースター、ってのは全体構成考えずに書き始めると、何かが下りてきて物語が自分で勝手に走り始める…との制作スタイルのことらしい。普通の人間を書くのに長けている、とも。



少額のネコババばれるのが嫌で連続放火に走る小市民。覚悟もなしにヤクザに憧れ、勝手にずるずる堕ちる少年。市民運動の欺瞞に気付かず利用され、誰からも孤立した果てに愛のかけらもない夫を庇うため偽装放火を試みる主婦。シャブに狂った刑事、保身に走る警察幹部。みんなリアルと言えばリアル。ディテールを尽くす作家さんだわ、確かに。

ただ一人、失った妻を忘れられずに自棄になっている…にも関わらず比較正義の行動を貫く主人公刑事がリアルでない。クライムの緊張感は薄く、どこがクライマックスか解らないストーリーだが、文章がお上手なせいでさくさくだらだら読み進む。知らん間に読了していた。何が描きたかったのやら?

正月の酔頭で向かったせいかなぁ…少なくともさわやかな読後感ではなかった。
by cegero116 | 2011-01-04 20:07 | 本の虫 | Comments(0)