法務エレベーター

大・中・小、遠・近、難・易、色々取り混ぜてよくこんなに溜めたもんだのお仕事いっぱい。日曜日といえど全く休める気配が漂わない。天気晴朗なれど寒風吹き荒ぶ中、例の容疑者ルックで出勤する。

法務エレベーター_e0001663_1601587.jpg中で割と小さい方のお仕事、某3階建て店舗ビルでのエレベーター選定にあたり小さな疑問が生じる。狭小かつ変形な敷地のため、エレベーターと階段の占める比率が相対的に大きく、とにかく小さいものをとカタログやWEBで捜索する。相当昔から4人乗りというのはあった。住宅用に開発されたホームエレベーター(2~3人乗り)がもっともふさわしいのだが、通常の店舗ビルには入れてくれない。なんでかなぁ?なんて、深くは考えてはおらず、ホームエレベーターだからしょうがないのか程度の理解。

改めて調べてみると、木造用に設計されており、樹脂製だったりする商品はRC、鉄骨など耐火・準耐火の建築には使用できないとある。そりゃしょうがないな。で、諦めずにせっせと探してると、P社より「小規模建築物用小型エレベーター」ってのかあるじゃないの!3人乗りで、耐火建築にも使えるとな。4人乗りと比べて縦横10cmくらいではあるが節約できる。いいぞ、さすがP社。

と、これは福祉目的で開発されたもので、福祉施設にしか設置できないとのメーカーのお答え。「店舗とは言え、高齢者の方・足の不自由な方が2、3階へ行けるように設置するのだが、それでもだめなの?健常者が乗るからダメなの?」に、P社さん、社内でじっくり検討してくれてダメと結論してくれた。

ダメなものをそれ以上突っ込んでもしゃあないので、結局4人乗りで設計することにしたのだが、どうにも腑に落ちないので、その理由・合理性を推理してみる。

指導官庁より、何らかの補助金をいただいており、その使途に厳しく制限が設けられてる可能性はある。交通の妨げになる、等の社会的不具合を考慮してなお、駐禁が適用にならない障害者マークの車を健常者がばんばん乗り回してたのでは示しがつかん、のと一緒だ。が、高齢者・障害者の方は福祉施設にだけ行くわけではない。普通の生活においてこその行動の自由。バリアフリー法や福祉のまちづくり条例などと役人に言われなくとも、心ある店舗経営者でも心がけるものなのだよ。

そんな制度上の問題ではなく、構造上・機能上の問題ではないかとも考える。高齢者は当然のことながら余命が短い。万が一の事故の際その命が失われたとしても、国家としての逸失利益は一般人に比べて些少であると割り切り、安全性を一ランク低くしているのかも・・・と、所内でこの意見を披露したところ、一笑に付される。動きの不自由な方の利用に供するなら、より一層の安全性があって然るべきだと。

ただ、それは宗教的・倫理的なものの考え方であって、全てを数値化して幸福と不幸がバランスするポイントを探したのかもしれない。ベンサム風功利主義だ。自動車の構造に不備があり、1千万台もの修理をするコストと、ほんの僅かの確率で起こる事故の賠償コストと比較して、修理しないと結論付けた米国メーカーもあったもんね。シンドラー以来、エレベーター会社のコンプライアンス意識は極端に高くなってるとは知ってはいるが。

なんでそんなおおげさなことに・・・と、笑われているうちに当該P社カタログに不審な書込みを発見する。・・・1日50回程度の乗降とする・・・と、うんと小さい文字で書いてあるではないか。やっぱり安全性・耐久性に何かのからくりがあると見た。
by cegero116 | 2012-01-29 16:00 | MONO語り | Comments(0)