松林図屏風

松林図屏風_e0001663_22575057.jpg北京往復飛行機長旅の友「松林図屏風」。萩耿介という著者名も初めて。本能寺の変で始まるなんか読んだことあるような辛気臭そうな出だしにちょっと読んで放置してあった本。往路の機内で宿題の内職エスキス始めたものの、いまひとつ捗らずにひょいと手にとって読んでみると、これがことのほか面白い。帰りの飛行機の中へ持ち越して成田着く前に読了。

一代で狩野派に対抗できる「長谷川派」を創立した長谷川等伯の一代記・・・だけでは辛気臭かったろうけど、小説松林図屏風はフィクション、ロマンたっぷりの読み応えあるエンターテイメントであった。本能寺~光秀三日天下から秀吉全盛の頃が舞台。仙洞御所造営や利休の切腹、秀吉長男の鶴松夭折など、史実の進行にあわせて巧みに物語が展開する。

成り上がりだからこそ仕事の受注や一門の資金繰りにも追われる当主等伯。親友日通や後妻となるさととの絡みが私のお好み。後半の久蔵と義春、璃枝と桔梗の微妙なロマンとメインストーリーの絵師物語のバランスも心地よい。駆け足で追っているようで、場面展開が達者なゆえに丁寧に書き込んでるように見える。

不思議にとても新鮮な小説だなぁ、と思えた。
by cegero116 | 2012-11-02 19:24 | 本の虫 | Comments(1)
Commented by おーくん at 2012-11-03 11:58 x
去年、日経新聞で、安部龍太郎『等伯』が連載されていた。結構おもしろく読んだ。日経取るの止めないのは連載小説読むためだったりする。今は、ネット版の時代なんだろうけど。