中原の虹

中原の虹_e0001663_941317.jpg昨年、1・2巻が発売され、すぐにでも飛びつきたかったが、4巻全部出るまでは・・・と、我慢していた浅田次郎「中原の虹」。(実は、¥1,600/冊とお高いので、文庫になってから、と思ってた節もあり^^)

5月に第三巻が刊行されたと聞き、辛抱堪らず購入。勿体ないのでじっくり時間をかけて三冊読了・・・予定通り大感動、大興奮!¥1,600-高くなーい!

ただ、4巻目が出てないので消化不良。今年の11月まで待たねばならんらしい。



ずいぶん前に読んだ「蒼穹の昴」の続編。私は、読んだらすぐ忘れてしまう「ニワトリ読書人」だが、この前作は覚えてたぞ。科挙に挑み、状元進士としてこれを突破する梁文秀と、自宮して宦官の世界で極貧からの脱出を試みる李春児。二つの軸のドラマが、戊戌の政変など激動の実話の中に嵌め込まれ、創作との境界がわからなくなってしまう大ロマンであった。

まさにその続編がこの「中原の虹」だが、時代が進み世界の激動もいや増す中、主人公に張作霖と袁世凱という実在の人物が加わる。3巻までのところ、張はスーパーヒーロー。実話とごっちゃになって、「へぇ、これが真実だったのか!」と驚き、「いや、これは小説なんだよな」と思い直す。前作、今作を通じて、かの西太后を慈愛あふれる比類なき指導者として取り上げた著者だもの、張作霖だってきっと創造されたヒーロー、なんだろうな??と、考え込んでしまうほど、リアリティに満ちている。

「壬生義士伝」で、涙を搾り取られた吉村貫一郎と、全く同じ手法と解ってるのだが、名人の筆はそんな批評的な読み方を許さない。史実をある程度知っている為、柳条湖での爆死に向けてどんな仕掛けが施されているのか・・・11月が待ち遠しいな。

幼帝溥儀のひらがなの台詞回し、吉永大佐のカタカナ混じり文の書簡、まことに興味深し。また、時代を飛び越え、ヌルハチ・ハンや李自成までが躍動するに至っては、もうたまりません。

「小説の大衆食堂」と自称している著者。(by Wiki)・・・その食堂の中の、食べ放題フルコースを戴いた満腹感なり。
by cegero116 | 2007-07-10 12:56 | 本の虫 | Comments(0)