蟹工船

蟹工船_e0001663_0123100.jpg時ならぬ蟹工船ブームとか。カバーも昔のままの文庫本、3~40年前に読んだ筈とは思うが、とても探す気にはなれず改めて購入、¥400-。

何故に今頃こんな古めかしいプロレタリアート文学が?…ほんの少し前まで、歴史に埋もれた暗くダサく黴臭い思想文学で、若者なんか見向きもしなかったのにね。私だって本の名前もまるで忘れており、再読するとは思いもしなかった。

何かの書評によると、格差社会でのた打つ現代のワーキングプア、非正規雇用の労働者が我が身をなぞらえているとか…何を言ってるんですか!日本のどこにそんな貧困があるというのですか、と竹中君が凄んでたが、劣悪さを競ってるのではなく、どうやっても這い上がれない虚しさに共鳴してるんだろうな。

あの思想が唱える打ち倒すしかない階級相互の憎悪はわからなくはないが、彼の「機会の平等が与えられているのだから、あとは自己責任で勝ち抜く気概が国の活力を育む」とはある意味一貫していて清々しい。永らく私もそう思ってたなぁ。

小説は、軍政下でこれ書いちゃ殺されるわな、の表現たっぷり。なまじ素晴らしい文学性を備えているが故にどんなアジ演説より甘粕大尉の気に障ったのだと思う。虐げられた階級の同志たちが、海を隔てつ腕結びゆくことが解決になるということそのものが、有史で否定されてしまったのは気の毒ではあるが。

何か読み疲れてしまったので、併載の「党生活者」は読まずに本を置く。電車の行き帰りに読むには不向きですな。
by cegero116 | 2008-06-11 00:01 | 本の虫 | Comments(0)