ベンジャミン・バトン

ベンジャミン・バトン_e0001663_12202913.jpg80歳の身体で生まれ、長じるにつれだんだん若返ってゆく男の一生を描いた映画「ベンジャミン・バトン、数奇なる人生」、167分の大作を鑑賞。感想:面白かったぁ~!

先週、「チェンジリング」で、ヨメはんのアンジェリーナ・ジョリーに真っ暗けな気分にさせられたのに比べると、観終わった気分がずいぶん違って、ノー天気なさわやかさで映画館を後にすることができた。ぶらピのキャラクターかもしれない。



とんでもない畸形での誕生と、父親による遺棄にもかかわらず、偶然捨てられた場所が老人ホームで、慈しみ深い養母に拾われる・・・よく考えてみればご都合主義だし、よぼよぼの少年期に彼を育てた船長と共に太平洋戦争で奇跡的に生き残るのも作りすぎ。彼を捨てたことを終生悔やみ続ける実父が事業で成功した大金持ちで、その全てを譲られるという設定も納得しかねる・・・が、人生を逆さに生きなくてはならなかったベンジャミンが、その人生で何事もなすことなく淡々と生きるために必要だった設定と思ってなんとか納得。

「人生は有限、だからこそ今を大切に生きよう」、解り切ったことだが、殆どの人がちっとも解ってないテーマをやや模式的に丁寧に諭す教訓映画ともいえるな。ちっとも立派じゃなく、勇敢でもなく、静かに運命を受け入れ、ただただ人に優しいだけの人生・・・ぶらピ以外では上手く演じられなかったと思う。

また、幼女時代に老年のベンジャミンと出会い、心引かれたのち、バレリーナとして成長し、老いてゆくデイジーを演じたケイト・ブランシェット、これまた彼女以外では映画のテイスト自体が変わったと思う。日本人の好みとはいえないがびがびの美しい容貌・・・女王さまだもんな・・・彼女も、思春期の少女から臨終の床の老婆までを見事に演じきっている。養母も養父も、実父も船長も、旅先で出会う人妻も、ピグミー族の女たらしも脇を固める俳優たちがいずれ劣らぬ好演・・・キャラが立っているのだ。誰が作ったの、こんなの。

80年の人生を167分で語るのだが、物語はもう少し突っ込めといいたくなるくらいスピーディ。時計など全く見る気にもならない。場面が変わるたび、ぶらピが若返ってゆくのが楽しみになり、メイクアップアーチストの思う壺にはまる。悔し・・・いや、いい男だ、ブラッド・ピット。

若返りの薬飲みすぎて赤ちゃんになる寓話は一杯あるので、これもたぶんそうなるだろうと思ったとおりのラスト。「人間、生まれたときも死ぬときもオムツ」・・・看取ってくれるのが生涯を共にしたデイジーの腕の中って所に大きな救いがある。ほんのり温かい気分にさせてくれた好作品に☆☆☆です。
by cegero116 | 2009-03-08 12:20 | Cinema | Comments(0)