実録・連合赤軍

実録・連合赤軍_e0001663_1093558.jpg2年ほど前の映画。評判になってたのを見逃し、今回再封切とのこと、早速銀座シネパトスへ観に行く。絶対同じ料金は払いたくない道路下の映画館。今回に限っては、作品とハコが妙にマッチしてる。場内が煙もうもうだった京一会館と重なるからかな?

初日ということで、主演の俳優たち、監督の若松孝二氏の舞台挨拶。永田洋子、森恒夫、坂東国男役がみな1972年生まれ、挨拶ではさわやかな若者にしか見えなかったが、作品内では鬼気迫る演技。72歳の若松監督の「なんとかあの時代に何があったのかを残しておきたい。」との情熱によるものにちがいない。

少し前にドイツ映画「バーダー・マインホフ」を観たばかり。同じ時代の同じ狂気が描かれてるが、国民性の違いもよく解る。要人誘拐・暗殺、爆弾テロに走ったドイツでの狂気が、日本では身内の粛清に向かった。双方に共通するのは、こうなった思想背景を描写していないこと。描写しようにも、あの時なにやってたんだか思い出さないのだろう。



監督の思い入れで、当時の空気が画面に満ち満ちている。学生たちの髪型も服装も、喋り方も音楽も。数少ない観客のほとんどが、そう、こんなだったと感じる世代。演じてる若い俳優、我々の時代に戦争映画出演してるのと同じ気持ちだろう。

が、私らが太平洋戦争の若者たちについて想像するのと、今の若者が全共闘の時代を想像するのとはずいぶん違うと思う。おそらく後者の方がずっと困難だろう。私にしてから3時間10分、何処にも共感する部分が見当たらなかったのだもの。

限りなく妄想に近い「思想」、形式だけなぞった空疎な言葉と行動は、破滅型密教としか言いようが無い。虐げられたものへの連帯も、権力に対するきちんとした反抗も為し得ない危険な遊戯。若松監督でさえ、仲間を縛って刺し殺すことが革命に繋がると信じる思考回路を説明しきれてるとは言い難い。ひとりひとりは純粋だったのだ・・・オウムの死刑囚を語る際にも用いられた慰めの観点しか見えないのも止む無し。

ただ、共感することは無くとも、映画としての190分は全く退屈しない出来。遠山美枝子の坂井真紀はすごい演技、総括・殺害されるシーンはとても直視には耐えない。あさま山荘の銃撃シーンよりこちらがクライマックスだな。

ほか、たぶん売れない劇団員さんたちだろうが、各役者の芝居もすごい。アンドレアス・バーダーが。大友組の千葉ちゃんみたいだと書いたが、今回の森恒夫がその役。ウルリケ・マインホフの赤軍での立ち位置が映画ではよく解らなかったのに比べ、今回の永田の存在感は抜群。坂口、坂東、吉野ほか、登場人物は全て実名、かつ覚えている限り、史実に忠実。

完全に包囲され、絶対に突破できない山荘の中で、つまみ食いを共産主義的規律に反すると自己批判を迫る・・・「食糧温存のためこれから雑炊とする・・・異議なし!」主人公たちの滑稽極まる描写で、監督が何を描きたいのかよく解る。ただ、加藤末弟のラストの涙は余分。現代の価値観、ヒューマニズムで作ったフィクションだな。

しかし、なんで好んでお金を払って暗い気分になろうとするのか。意義なーし!なんて言われそううだな。
by cegero116 | 2009-10-04 10:09 | Cinema | Comments(1)
Commented by おーくん at 2009-10-05 22:04 x
オームに通じるのかねー