永遠の0(ゼロ)

永遠の0(ゼロ)_e0001663_12435514.jpgずっしりとした文庫本、著者のデビュー作とのこと。タイトルの0(ゼロ)は零戦のゼロ、現代に生きる道標を失ったかのような若者が、特攻で亡くなった祖父の足跡を辿ってゆく物語。

作品の9割は祖父宮部久蔵の戦友達の語り。憎んでいた者、尊敬していた者、命を救われた者、それぞれが口を揃えて、「宮部は命を大切にしていた」「無二の優秀な戦闘機乗りだった」と想い出を語る。記述は到底人が記憶で語れるレベルではなく、珊瑚海からミッドウェー、ラバウル、ガタルガナル、沖縄戦から特攻に至るまでの、きわめて詳細な戦記。マニアには物足りないけどテンポが良くて全く飽きない。



結局、宮部の素顔は、限りなく家族を愛し同僚を愛し、敵にすら敬意を抱かせ、最期にあたっても部下を庇った聖人であったとの結び。若者たちは絵に描いたように真っ直ぐで感情豊かで、折に触れては祖父の戦友と共に号泣する。金髪のヤンキー孫も号泣する。解説の児玉清さんも一緒に号泣する。

たしかにうるうるっとするシーンは満載。ラストの仕掛けは辻褄は合っているが、ちょっと現実味が薄く強引な印象。現代パートの登場人物が教育テレビの子供キャスターみたいで、何のドラマもないのがやや残念ではあるが、プチマニアとしては楽しめた一冊でした。
by cegero116 | 2011-02-02 12:43 | 本の虫 | Comments(0)