夜の桃

夜の桃_e0001663_23163719.jpg

石田衣良氏のエロ本…と呼ばれるのはおそらく著者本望にして確信犯。ナベジュンらに、どや現役はちゃうやろ!と喧嘩売るのが執筆動機と思われるゆえ。規制と戦うことで成長を遂げてきた官能文学。野坂翁など、あらゆる規制がなくなることを誰よりも恐れてたのを思い出す。その未来が来てしまった現代、本物の腕前があからさまになるのだよと挑発してるのだろう。

好きになれないキャラクターだが、毎回上手いなぁとつくづく思ってる。今回はディテールのみ。神宮前の五億の家に住むWeb広告制作会社の経営者か主人公。歯医者と銀座の老舗の四代目、と百億の資金を動かすディーラーが友達で、仲間で青山にバーを出してる。仲の良い妻と割り切った愛人、に加えて20も年の離れた新しい恋人…。

そんなやつおらんやろ、チッチキチー、の突っ込みを待ってるな、衣良。世の嫌な人間を類型的に描くことにで、ささやかなニヒリズムを楽しんでるに違いない。そんなことしてる間に、ほんとに嫌な人間になってしまい、書くもの全てつまらなくなってしまった林真理子さんにならなきゃいいな…まだ面白いよ、衣良さん。
by cegero116 | 2011-02-22 23:16 | 本の虫 | Comments(0)