アクロイドを殺したのは誰か
新聞の書評で取り上げられていたのを見てアマゾンで購入。
評者が「なるほど、こちらの解釈のほうが圧倒的に説得力がある。真犯人は間違いなくこの人間だ。」と書いているのを見て、「原作者が組み立てた以上の解釈があるわけはない!まして、あのアクロイドだぞ、世紀の大名作、ミステリー史上最驚のトリックのあの作品に別解釈を加えるなんて!所詮パロディ本じゃろ。」・・・と半ばけなすために買ったようなもの。
準備として、まずは38年ぶりに本編「アクロイド殺害事件」を文庫で再読。どうして中二のときに読んだ本をこんなに良く覚えてるのだろう、というくらいディテールの隅々まで記憶にあったのが驚き。想い出すに少年少女文学全集を卒業した後、「次郎物語」の次に大人版で読んだのがこれ。ホームズやらルパンやらの推理小説を少年版で読んでなじんでいたはずのに、この犯人が明らかになったとき「そんなあほな!だまされたぁ!」と、きゃぁきゃぁ駆け回った純真な少年であった。その後、今日に至るまで、ずいぶんたくさんのミステリーを読んだが、これは絶対BEST5に入る。
再読して、犯人を熟知して細かく読むと、実にあちこちに巧みな罠が仕掛けられているわ。推理小説のルールの盲点を突いた卑怯なトリックだとのヴァン・ダインの指弾も発表前から織り込み済みの完全なプロット。私程度の読み方ではポワロの推理に一分の隙もなく、犯人は語り手である「私=ジェームス・シェパード」でしかありえない!が再読の感想。
「アクロイドを殺したのは誰か」の挑戦的なタイトルとは異なり、内容は筆者の専門の精神心理学、妄想とそのプロセスの解析にかなりの部分をさいた真面目な研究書。正直、この部分は少し難解。巻頭と巻末でだけアクロイド殺しの真犯人について分析している。これが「ううむ、その線があったか。なるほどその方が物語はずっと深みが出るな・・・」と感心。ポワロに犯人として糾弾され、自殺を決意して手記を書き終えるシェパード医師の最後の独白も、バイヤールの再審結果となんら矛盾しない。ひょっとして、アガサ・クリスティ自身が「アクロイド事件再審」を出版するために伏線を張ったまま書き終えたのではないか、とまで思えてきた。
すぐれたミステリーは、すっかり読み終えて結末を万人が知るところとなってもなお、読者を惑わせ続けるものなんだなぁ、と改めてクリスティに脱帽。参りました。
評者が「なるほど、こちらの解釈のほうが圧倒的に説得力がある。真犯人は間違いなくこの人間だ。」と書いているのを見て、「原作者が組み立てた以上の解釈があるわけはない!まして、あのアクロイドだぞ、世紀の大名作、ミステリー史上最驚のトリックのあの作品に別解釈を加えるなんて!所詮パロディ本じゃろ。」・・・と半ばけなすために買ったようなもの。
準備として、まずは38年ぶりに本編「アクロイド殺害事件」を文庫で再読。どうして中二のときに読んだ本をこんなに良く覚えてるのだろう、というくらいディテールの隅々まで記憶にあったのが驚き。想い出すに少年少女文学全集を卒業した後、「次郎物語」の次に大人版で読んだのがこれ。ホームズやらルパンやらの推理小説を少年版で読んでなじんでいたはずのに、この犯人が明らかになったとき「そんなあほな!だまされたぁ!」と、きゃぁきゃぁ駆け回った純真な少年であった。その後、今日に至るまで、ずいぶんたくさんのミステリーを読んだが、これは絶対BEST5に入る。
再読して、犯人を熟知して細かく読むと、実にあちこちに巧みな罠が仕掛けられているわ。推理小説のルールの盲点を突いた卑怯なトリックだとのヴァン・ダインの指弾も発表前から織り込み済みの完全なプロット。私程度の読み方ではポワロの推理に一分の隙もなく、犯人は語り手である「私=ジェームス・シェパード」でしかありえない!が再読の感想。
「アクロイドを殺したのは誰か」の挑戦的なタイトルとは異なり、内容は筆者の専門の精神心理学、妄想とそのプロセスの解析にかなりの部分をさいた真面目な研究書。正直、この部分は少し難解。巻頭と巻末でだけアクロイド殺しの真犯人について分析している。これが「ううむ、その線があったか。なるほどその方が物語はずっと深みが出るな・・・」と感心。ポワロに犯人として糾弾され、自殺を決意して手記を書き終えるシェパード医師の最後の独白も、バイヤールの再審結果となんら矛盾しない。ひょっとして、アガサ・クリスティ自身が「アクロイド事件再審」を出版するために伏線を張ったまま書き終えたのではないか、とまで思えてきた。
すぐれたミステリーは、すっかり読み終えて結末を万人が知るところとなってもなお、読者を惑わせ続けるものなんだなぁ、と改めてクリスティに脱帽。参りました。
by cegero116
| 2006-09-24 12:09
| 本の虫
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